既に季節は冬に入り気が付けば師走ももう中旬。
全国の洋菓子店が1年の半分の稼ぎを叩き出すと言われているクリスマスイブまであと
1週間。勿論「エトワール」もその例外ではありえず、閉店後も夜遅く、いや朝早くまで
厨房の灯りが消される事はないという日々が続いていた。
そんなある日の出来事。
ブルルル…ブルルル
唐突に振動し始めた枕許の携帯の僅かなモーター音で目が覚めたのはなんとなく嫌な予感
を感じ取っていたからだろうか。薄暗い部屋の中半ば反射的に現在時刻を確認すれば午前2時。
一般家庭に軽々しくメールを送信するにふさわしい時間とは言い難い。しかもこの振動は
音声着信のパターン。頭に浮かんだそのままの感情を声音に載せてエンは電話の受信ボタンを
押した。
「…………もしもし?(間違い電話だったら絶対コロスという香りぷんぷん)」
「あ、ぼっちゃ〜〜〜ん!!良かった電話に出て頂けて!!無視されるかと思っちゃい
ましたよ〜!!」
「……グレミオ…???」
チーフパティシエであるグレミオはこの時期この時間は当然パティシエ達の指揮を取って厨房に出ているはずだ。
という事は。
「-------何かあったんだな??」
「あっはい、そうでした!そうなんです!!実はオーブンが…オーブンが…!!!」
「落ち着いて。まず息を大きく吸って。吐いて。」
「すうううう〜〜っ、はあああああ〜〜〜っ(深呼吸)」
「で?何だって??オーブンが??」
「逝きました。」
「………なんだって??」
「オーブンの!一台が!!原因不明の症状が出まして!煙を吹いてたった今逝き
ました!!」
(…オーブンが…逝った?どこへ??)
寝起きの頭は都合良く現実逃避を決め込んだようだ。
「なんだって?!ジュッポには連絡したの?」
「もちろんしましたとも!!それが…なんでも全国ロボット博覧会巡りの旅に出かけた
とかでどこにいるか分からないんです!!(号泣)」
「!!!!!」
電話の向こうでは完全にパニくったグレミオがあわあわ騒いでいる。騒ぎたくなる気持ちは分からないでもないが。経営者としての彼が出した結論は
「---------寝る。おやすみ。」
「そんな、現実逃避しないで下さい〜〜〜o(ToT)o 」
「その件は明日は早めに店に出るから。そっちで聞く。」
「ぼっちゃあああああんん!!(T_T) 」
「今から騒いだってどうしようもないだろう。どっちみちこんな時間に働いてるのは
24時間営業のコンビニ店員か漫画家くらいだよ。オーブンはまだ他の機械が動い
てるんだろう??とりあえず今夜はそれでしのいで。」
まだむこうで何か言いたげなグレミオを遮って一方的にボタンを押した。
そのまま毛布に潜り込む。
(ああ…今年のクリスマスは一波瀾ありそうだ)
| 2001.12.23 |
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→ACT.2
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