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「なにやらお前さんに兆しが出ておるのう。」
「波と波紋が近付いている、と出ておる。それは大きくはないが、小さい
からと言ってバカにしちゃあいかん。
こういう事はほっとくと後でとんでもないトラブルになるもんだと、
相場は決まっとる。」
「……」
怪しい装飾の施されたテントに、異国情緒豊かなきつい香の香り。
目の前で難しい顔をした小柄な老人。
見つめる水晶玉に映りこむのは金髪の青年。
自称・魔術だけでなく占いも天才・ピッコロに少し強引に引っ張り込まれた
天幕で、ジャックは内心困惑していた。
もちろん表情には余り出ていないのだが。
老人はまだ難しい顔をしている。
「兆し…?波紋?」
「そうじゃよ。兆し。きっかけ。小石が池に落ちた時のような。
その波紋が今後次々とお前さんに打ち寄せるじゃろうな。ふぉふぉ」
「…?」
「何か心当たりはあるかな?」
「…ない」
ジャックは首を横に振る。
じゃろうのお、と老人は声を上げて笑った。
狐につままれたような顔をしたジャックは、簡潔かつ正直に答えるしかない。
「まあ、お前さんには大事な兆しみたいじゃから、見逃さない方がええ。
水面の波紋はくっついてくっついて遠くまで広がっていくじゃろ。
どこかで止めてしまったらそこでお終い、そういう事なんじゃ。」
言い終えたピッコロが香灰を振りまいて神妙に手を合わせる。
これで終わりだろうか、と飲み込めない様子ながらジャックも席を立った。
「幸運を」
「…気を付ける」
告げるジャックに手を差し出したピッコロはウィンクしてみせた。
「特別に10ポッチで」
天幕を出たジャックは溜め息を付いた。
まったく、何がなんだか分らない。
自分には大事な兆しと言われても思い当たる事なんてない。
思わずまた溜め息がこぼれる。
例えば最近少し多くなった溜め息をつく、という行動。
その行動に隠された真実にもまだジャックは気付かない。
(湖でも…見に行くか)
ジャックはお気に入りのポイントである船に向かった。
溜め息の原因でもある褐色の肌をした少女が彼を探しているのも知らずに。
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| 2003.09.04 |
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